出典:Kabecao氏所有のYishama C Hijaz 18
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イントロダクション
目次
2017年頃からステンレス素材のハンドパンチューニングを成功させた工房が続々と登場してきてます。
ステンレス素材(STL)の特徴は?現行の窒素加工スティール(Nitrated)とどのような違いが?入手方法や価格は?
今回の丸いブログでは近年、脚光を浴びているステンレス素材のハンドパンを特集致します。
ハンドパンについて情報発信しているブログ「Master The Handpan(英語)」をベースにしています。ぜひ原文にも目を通して下さいませ。
ステンレスとは?
改めて、ステンレスとはどういった素材なのでしょう。
錆びにくい合金鋼のこと。国際規格のISO規格では、鉄を50%以上、クロムを10.5 % 以上、炭素を1.2%以下、を含む合金鋼。(ウィキペディアより)
通常の鉄(スティール)に対して、クロム要素が入ることで耐腐食性と防錆性に強くなるとのこと。酸素や湿気から保護する膜が内部に生まれ、空気や水の侵入を防御しているからだそうです。
ステンレス製品は車両から流し台、包丁などの台所用品まで幅広く使用されている現代の素材なのです。
ハンドパンからみたステンレス素材
現行ハンドパン素材は窒素加工スティールが大半を占めています。これは素材である鉄の表面を窒素処理することで、防錆性に強い膜を作るプロセスです。
対してステンレスは、鉄ではなく合金。つまり素材そのものが違うのです。錆びに強くなるだけでなく、チューニングも狂いにくい。音質音圧もガラリと変わります。さらに湿度の影響を受けにくくなるため天候によってサウンドが変わることも起きにくくなります。
しかし、通常のパンと比べチューニングが難しいと言われています。2017-18年に欧州ではステンレスチューニングのノウハウや素材が共有され、チューニングに成功した工房が多く出現しています。
一気にトップブランドとなったYishama Pantamはステンレス素材で独特な超低音ながらクリアなサステイン(Ding – F2)に成功。
‘Astronaut’ Yishama Pantam Low F2 | Great Wall of China (China,2018)
ステンレス製(STL)と窒化鉄(Nitrated)の比較
さて、ここから楽器として特性をみていきましょう。現行の窒化鉄(Nitrated)との比較です。
ステンレス製(STL)の特性 | |
サステイン | リッチで長い |
音色 | オープンで明るいサウンド |
アンプ(増幅度) | 広がりが生まれる |
音圧 | ダイナミック |
防錆性 | 強い |
チューニング | 狂いにくい |
オイルメンテナンス | 頻繁にする必要はない |
このように表にすると、ステンレス製がいかに革新的なことかお分かり頂けたでしょうか?ただし、ステンレス製の方が値段が高額になってしまいます。
Nirvana Handpan(LA,USA)による比較動画が参考になります。中央右の褐色がかったハンドパンがステンレス製です。
‘Nirvana Handpan – Different Materials = Different Tones (US,2017)
ステンレス(STL)ハンドパンのお手入れ
防錆性に強いステンレス製(STL)とは言えども楽器のメンテナンスはとても重要です。怠ると錆びが発生し音に影響が出る可能性があります。
窒化鉄(Nitrated)の場合、Phoenixオイルなどでオイルメンテナンスが必要でしたが、ステンレス製(STL)ではそこまで頻繁にオイルメンテをする必要はありません。ただし、プレイ後の汗(塩分)や油分を拭き取ることは決して忘れてはいけません。
また、ケースにずっと入れて置くのではなく風通しの良いところで保管しましょう。
”ハンドパンの小型化”への兆し
欧州ではハンドパンはメジャーな楽器になりつつあります。成人男性だけでなく、小柄な女性や子供向けのハンドパン需要も高まりつつあります。
しかし、小さいパンはサステインの伸びも弱く、倍音の迫力もない、さらに音量も小さくなってしまうためオルゴールのような音になりがちです。基音に対してオクターブや5thチューニングが入ることで、唸るような倍音がハンドパンの魅力の一つだったはず。
今回紹介したステンレス製の誕生によって、サウンドを維持した ”ハンドパンの小型化” に大きな兆しが生まれたのではと思います。
今後も新しいことが次々と生まれるハンドパンシーン。各工房の動きに注目です!
Mini Taopan Handpan 46cm – Gminor – Sneak preview (Germany,2018)
ドイツ工房のTaoPan、ステンレス46cmのミニハンドパンチューニングに成功したと発表。
まとめ
如何でしたでしょうか?ステンレス素材のハンドパンについてご理解頂けたでしょうか?
STL(ステンレス)推しで文章を進めてきましたが、どの素材でも最終的にどのように調理してプロダクトに仕上げるのはチューナーの腕にかかっています。サウンドの好き嫌いもあり、オープンな音が苦手な方もいると思います。
最終的にはどんな素材で出来上がった楽器でも、自分のモノにするかどうかがプレイヤーとしての責務だと思っています。海(路地裏CatWalk) さんが仰るように、まずはお手元の楽器を愛しましょう。
その楽器にしか、その人にしか出せない音があると私は信じています。
初めからメーカーや質をやたらと気にする人がいますが、誰かの受け売りや食わず嫌いの考え方は一度捨てて、どうか自分で選んで手に取ったその楽器を死ぬほど愛してやってください。愛機達はいつも応えてくれます。 pic.twitter.com/dRRrAyRuWl
— 海(路地裏CatWalk) (@tvdrokusiki9527) March 21, 2018
Happy Handpan Life!
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【参考文献】
Master The Handpan
Stainless steel Handpans: Just a fad?