バイリンガル脳のためのポリリズム講座

イントロダクション

ポリリズム(Polyrhythm)とは?

拍の一致しないリズムが同時に演奏されることにより、独特のリズム感が生まれる。世界各国の民族音楽にもみられる。(Wikipediaより抜粋)

と言われています。

複数の周期でリズムを掴めることは、ボディムービングの軸をずらすことが可能なため、楽器を演奏する方はもちろん、ダンスやジャグリングをよりグルービーに魅せるためのメソッドになります。習得しておけば一生の武器になると言われています。

特にミュージシャンの方にとっては、楽曲を2つの拍子で捉える”バイリンガルのスキル”を装備することで、使い古されたフレーズでも”新鮮さ”を与えてくれます。それがご自身の作品の賞味期限を伸ばすことに繋がっていくと思います。

The benefits of a bilingual brain (TED,2015)
バイリンガル脳の特異性

語学におけるバイリンガル脳とはどのような状態でしょうか?それは言語Aから言語Bへと脳内で翻訳しているのではなく、2つ同時に鳴っている状態のこと。

2つの言語コードを1つの概念体系の元に同時に発達させる(TED,1分15秒〜)

ポリリズムがナチュラルに生まれている場所には、プレイヤー自身が幼少期に複数の民族集団(ethnic group)の中で育つ環境があった、と推測できます。

しかし、今まで第二言語を学ぶ幸運に恵まれなかったとしても、、、Never Too Late !!
ポリリズムにおいても、音の構造を理解した上で十分にトレーニングを積むことで2つのリズムを同時に奏でることが可能です。

それでは、壮大なポリリズムの旅に出発しましょう。

ミュージシャンが押さえておく3つのリズム

Jazz Pianoレッスンを配信しているJulian Bradley講師のチュートリアル。彼は理論よりも耳でのトレーニングを重視した講座を心掛けているようです。

より深く学びたい方は彼が運営する”The Musical Ear(英語)”を受講してみてもよいでしょう。今回のポリリズムレッスンは無料開放している講座です。

POLYRHYTHM LESSON: 3 rhythms every musician needs to know(UK,2013)
原曲:Philip Glass – Minimalist Composer

それでは、3つのリズムを1つずつ練習していきましょう。Julian講師はコード進行と一緒に説明してくれていますが、ここではリズムだけに注目します。膝を両手で叩くことで、まずポリリズムの音を知りましょう。

1st Rhythm : 2拍3連(初級)

ベースとなるのは3連符×4つで構成されているリズム。
(タタタ、タタタ、タタタ、タタタ)
もう片方の手では8分音符2つ(2連符)× 4つが交わります。
(タッタッ、タッタッ、タッタッ、タッタッ)
「タタタ」と「タッタッ」がクロスされたのが2拍3連です。

拍の頭は右手も左手も同じ」ということ意識したら簡単にとれるかもしれません。
ハンドパン(Handpan)でとても多用されているリズムの一つ。
Hang Massive – Once Again のイントロでも2拍3連がベースになっています。

350px-Polyrhythm

3:2 Polyrhythm – bounce visuals to help you keep time – Bounce Metronome Pro(US,2011)

上の動画は数学者でポリリズム研究家でもあるRobert Walker博士によるバウンスメトロノーム。視覚化すると格段にわかりやすくなりますね!構造を理解するには最適です。

80 BPM – 3:2 PolyRhythm Metronome (World,2015)

3:2ポリリズムビート BPM80が30分間続きます。リズムを叩き込むための練習用にどうぞ!遅いBPMで構造を意識し、リズムキープすることが上達への近道。

ポリリズムが初めての方は、まず打点の位置関係を正しく頭に入れる必要があります。飽きるぐらい聞き込みましょう。

3連符を中心に聴くのか、8分音符2つ(※2連符)を中心に聴くのかで、身体の揺らし方が変わってきます。どちらで見るとどちらかが見えにくくなるのは「だまし絵」や「トリックアート」に似ています。

慣れてきた方は、3連符の頭を抜いたり(ンタタ)、真ん中を抜いたり(タンタ)、最後を抜いたり(タタン)、ミュート(ンンン)をつけることでバリエーションを増やしましょう。さらに余裕があれば強弱をつけて気持ち良いフレーズを組み立てていきましょう。

2nd Rhythm : 4拍3連(中級)

ベースとなるのは3連符×4つで構成されているリズム。
(タタタ、タタタ、タタタ、タタタ)
もう片方の手では16分音符4つ(4連符)×4つが交わります。
(タタタタ、タタタタ、タタタタ、タタタタ)
「タタタ」と「タタタタ」がクロスされたのが4拍3連です。

汎用性の高いリズム。欧米のダンスミュージックに多く見られます。
3_against_4

4 : 3 Polyrhythm – with bounce visuals to help you keep time – Bounce Metronome Pro(US,2011)
Robert Walker博士によるバウンスメトロノーム4:3です。
BPMが遅いため構造を理解するには最適だと思います。

90 BPM – 4:3 PolyRhythm Metronome(World,2015)
4:3ポリリズムビート BPM90が30分間続きます。練習用にどうぞ!

同じように慣れてきた方は、3連符と16分音符4つ(4連符)の打点のオンオフを操ってバリエーションを増やしてフレーズ作りに取り組みましょう。

3rd Rhythm : 4拍5連(上級)

5連符は密集するのでタイムストレッチを長く考えてみましょう。
4拍4連のリズム(1234, 2234, 3234, 4234)の上に5連符(タタタタタ)を乗せます
5_against_4

How to play a 5:4 Polyrhythm – Animation 3D Bounce Metronome Pro(US,2010)
バウンスメトロノーム5:4(その1)

How to play 5/4 over 4/4 Polyrhythm Animation 3D Bounce Metronome Pro US,2010)
バウンスメトロノーム5:4(その2)

Julian講師のようにまずは膝を叩いてリズムを頭に叩きこみましょう。拍の違うリズムが同時に進行していき、ある周期でカチっとハマる感覚を身につけるのです。

リズムを口ずさみ、丸いケーキを脳内でカット

と言ってもやはり難しいポリリズム。コツはリズムを単語で口に出して身体に染みこませることです。(例えば、3等分ならタ・ナ・カ、4等分ならカ・ワ・サ・キ、5等分ならセ・タ・ガ・ヤ・クなど)

また何等分に切り分けようが、1小節や1拍は同じということを念頭に置きましょう。繰り返しになりますが、「拍の頭は右手も左手も同じ」ということ意識することが大事です。

丸いケーキを思い浮かべ、それを3等分するのか、4等分するのか、5等分するのかをイメージしましょう。
Chocolate-Cake
1つの丸いモノを偶数カット(2等分<8分音符>・4等分<16分音符>)はそこまで難しくないかもしれません。

1_5
しかし、奇数カット(3等分<3連符>・5等分<5連符>)は本来割り切れない数字なので難しいです。
(*5は割り切れる奇数<1/5は0.2>という特殊な数字)

モダンポリリズムへ案内状

如何でしたでしょうか?ポリリズム面白いですよね。慣れてくると街で流れているBGMを脳内で拍子を変えて遊ぶこともできるかもしれません。

今回ポリリズムについて講義してくれたJazz PianoのJulian Bradley講師や数学者のRobert Walker博士はオーソドックスで教科書的なポリリズムでした。

しかし、今回本稿で一番紹介したいのが、TBSラジオ「粋な夜電波」のパーソナリティであるジャズミュージシャンの菊地成孔氏が配信しているニコニコ動画有料チャンネル「ビュロー菊地チャンネル」の「モダンポリリズム講義」です。

菊池氏曰く、欧米圏で語られるオーソドックスなポリリズムはクロスリズム(Cross Rhythm)と呼ばれるものであって、ポリリズムではないと指摘していました。クロスリズムとは、例えば3と4が綺麗に合わさった状態。つまり、Julian講師が今まで説明してきたこと、そのものです。リズムとしてはとても清潔感があるのです。

アフリカのストリートで自然発生的に生まれるお祭り「ドゥンドゥンバ(Dunungbe)」をみてみましょう。

(Matam,Guinea,2013)

複数拍子がブンブン飛び回り、拍子がグニャグニャ変化しています。菊池氏曰く、ポリリズムは「虫が飛んでいる」状態。予防接種(講義)を受けて視界を明快にする必要があるといいます。

第一回はYoutubeで無料開放されています。リズム全般に興味がある方はぜひご入会をオススメします。

モダンポリリズム第1回(Japan,2014)

菊池先生は講師としてのキャリアも長く、音大で非常勤講師も長く勤めておられます。また執筆業もされている方でもあるので、目から鱗なこぼれ話にも注目です。

モダンと付けた理由に、「現地では儀式性と結びついているポリリズムから宗教的な価値観を引き算し、リズム構造のみを取り出して体系的にカルキュラムを組んだため」と仰っています。

第1回は「西洋音楽中心で作られた楽譜(分音符と連符)ではポリリズムは正確に表記できない」と問題提起することで、周縁側から西洋価値観を疑うところからスタートしていきます。

全92回(約46時間)を終えた頃にはアフリカ的ポリリズム(微分系 – 分割してリズムを作る)インド的ポリリズム(積分系 – 積み上げてリズムを作る)のリズム構造を理解し、揺らぎのある気持ち良いビートを習得していることでしょう。

「リズムの微分と積分」(Japan,2012)
TBSラジオ「粋な夜電波」(第59回.2012.06.03放送より)
参照記事
東京都目黒区にある音楽学校メーザーハウスで開催された
ポリリズムワークショップ講義レポート
>>菊地成孔 ポリリズム講義

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