【最も解り易い】アサラト講座 – 西アフリカ編 –

イントロダクション

アサラトは西アフリカのパーカッション楽器です。主にセネガル、マリ、ブルキナファソ、ガーナなどで生息するオンコバスピノサ(Oncoba Spinosa)の実が原産。

《ASALATO KHADIM Promotion Film》(Senegal,2013)

【概要】
西アフリカのパーカッション楽器 ― アサラト。
アサラト職人歴15年でセネガルを代表するアサラトプレイヤー・KHADIM(ハディム)は今日も上質な天然アサラト球とリズムを求めて、小舟で小島を廻りアサラト制作に­励みます。

本投稿では、アサラト発祥地である西アフリカでのプレイスタイルから学ぶことを目的としています。

リズムミカルで、荒々しく、時に祭儀的なスタイルは、われわれ日本人にとって学ぶべき対象だと思えるのです。ではさっそく、西アフリカ人の猛者たちを見ていきましょう。

セネガル式 – アサラト Style 1-1

気だるいプレイに半端ないリズム感。(Senegal,2011)

音数に無駄がありません。ブレないリズムキープはアサラトが身体の一部のよう。

セネガル式 – アサラト Style 1-2

セネガル出身のスーパースター AKON – Don’t Matter を歌う。(Senegal,2011)

声も楽器の一部。

セネガル式 – アサラト Style 1-3

セネガル出身のスーパースター AKON – Don’t Matter (Long ver)を歌う。(Senegal,2012)

セネガル式 – アサラト Style 2-1

2009年にクラブヒットした IYAZ – Replay を歌う少年。(Senegal,2010)

途中でリズムと表情が変調しTouba Song (バイファール(Baye_Fall)賛美歌) へ。

その後、壁に当てリズムキープ。(Senegal,2010)

アスファルトに当てることでアタック音を増やしてよりパーカッショナブルな音へ。

上記2人のセネガル人によるアサラトスタイルは、フロップヘリ(下からのヘリ) で胸元にあてて低い音(バスドラム)を出したり、 口内で反響させ高い音を出し立体感をだしたりなど、身体全体を使ってドラムセットを再現するようなプレイが特徴です。

一見、基本的な鳴らし方しかやっていないように見えるかもしれませんが、リズムにとても粘り気(Sticky)があり、ただの4拍4連では表現できないグルーブ感があります。

さらに特筆すべきことは、アーティストの方は唄を歌っていることです。訛ったビートを奏でながら小節をすり抜ける唄を歌うのは難易度がとても高いと思います。歌声が主役の時は、アサラトは小粋なビートを奏で、ドラムブレイクに入ると、突如アサラトが主役になる瞬間はたまらなくカッコ良いですね。

では、どのようにこのリズム感を身に付けるのでしょうか? 音楽を身体で表現することがごく自然な環境で育った西アフリカのリズム感を、習得することはできるのでしょうか?

現地で撮影したオンラインレッスンをアップしましたので、ぜひ共有させて下さい。
それでは一つずつ学んでみましょう。

Lesson1 《セネガル式 – 左右交互ハングフロップ》

セネガル式 左右交互ハングフロップ基本動作(Senegal,2013)

【最も解り易い アサラト基礎講座】でハングフロップを習得した方は左右交互のハングフロップへ進みましょう。

Lesson動画のように、3段階のスピード(遅、普、速)を意識しましょう。難易度は遅い方が難しく、速い方が簡単です。ゆっくりしたスピードではっきりしたシェイク音とアタック音を奏でれるまで頑張りましょう。

前回講師のフランス人De Zeusさんによるハングフロップが「表のリズム」に対し、セネガル人Khadimさんによる左右交互ハングフロップは「裏のリズム」も内包していると言えるでしょう。

音楽史を遡れば、西洋が生み出したポピュラー音楽(バラード)を裏打ちで弾き直すことで黒人音楽のルーツである「ブルース」が誕生したと言われています。その後、Soul, Funk, Ska, Reggae, HipHopへと黒人音楽が発展しました。

「裏のリズムを意識すること」は黒人文化のパーカッション楽器を志すにおいてとても重要なことと言えます。これがセネガル式アサラト技法の基礎リズムとなるので、入念に練習しましょう。

Lesson2 《セネガル式 – 玉当て》

セネガル式 – 玉当て (Senegal,2013)

次は右手(利き手)側でフロップヘリ(下からのヘリ)で、左手で構えるアサラトに当てるリズム。左手側は構えるだけでなく、シェイク音をしっかり出すことにも意識しましょう。また、下玉を小指で固定し、上玉が下玉にコンコンあたるように空間を作ります。右手の下ヘリはぶつけると言うよりも、こすらせる感覚から始めていきましょう。

動画では撮影できなかったのですが、慣れてくると当て具合によって音の変化が表れます。

当てられるアサラトを密閉することでシェイク音がシャープな小刻みな音(Closed Snare – 低いスネア
当てられるアサラトを解放することでシェイク音に広がりのある破裂音(Open Snare – 広がったスネア

なお、利き手によるフロップヘリは単独で練習しておきましょう。

参考技法 – フロップヘリ(Japan,2008) Respect to hizakozouさん

Lesson3 《セネガル式 – 障害物当て》

セネガル式 – 障害物当て(Senegal,2013)

さて、最後は障害物当てです。これはハングフロップで周囲のモノにどんどん当てていくだけなので、そこまで難しくありません。左右交互に壁当てしてグルーヴ感を作り上げていくのはとても楽しいです。

野外でプレイする方は360度見渡し、周りにどんな材質のものがあるのか確認して、アサラトで当てましょう。地面やバケツ、缶ジュースやペットボトル、ビニール袋、周囲にあるものが音の違う楽器に変わるのです。

動画では少年が鉄筋コンクリートをグロッケン(鉄琴)のように扱いリズムキープしています。
障害物当てはストリート感もあり、アサラト発祥ならではのCoolな技法だと思います。

注意1:凹凸があるものに当てるとアサラトが破損する可能性が高まるので、平面や球面のものに当てましょう。
注意2:必ず周囲の許可をとってから当てましょう。公共物や私物を壊してはいけません。

Insane Street Musician in Washington D.C. (US,2007)

米国ワシントンD.C.のストリートドラマー。ドラムの原点。

KHADIM師匠 – 応用セッション

Khadim師匠によるデモ演奏。(Senegal,2013)

首からぶら下げているCaxixi (カシシ)に毎小節ぶつけてシェイク音が際立つことで、音がより立体的となり、強靭なGrooveが生まれています。

セネガル式アサラト講座 – Mika師匠編

Mika師匠のアサラトレッスン (Senegal 2012)

さて、今までの総集編です。別途、口内反響(3m14s~)についてもミカ師匠が詳しく教えてくれています。(Respect to Yoshiさん&Mikaさん

Saliou師匠による新しいスタイル

2013年、Saliou師匠によるサバールリズム。(Senegal,2019)

グリオの末裔、サバールの継承者でありアサラトの達人であるSaliou氏。彼はサバールリズムをアサラトで表現することでオリジナルスタイルを確立。
静音アサラトでのデモ演奏はセネガルへ渡航した時に撮影。

SaliouによるShowcase (Senegal,2019)

セネガルのオンコバスピノサ(Oncoba Spinosa)の聖地、カサマンス地方に到着したSaliouは素晴らしいショーケースを魅せてくれました。

Saliou師匠のリズムレッスン

ASALATO LESSON | Saliou | Rhythm 1 (Senegal,2019)

弱起(1拍目の前から) から入るアサラトリズムはとても新鮮。4拍目はほぼ休符という抜け感も◎
カケンココ、クカクカコン!

ASALATO LESSON | Saliou | Rhythm 2 (Senegal,2019)

これはSaliouの中で柱となっている重要なリズムでした。1拍,3拍のクラーベ感、2週目は頭拍が抜けたりと、まさに訛ったポリリズム。

カーンコンッ、カーンコンッ、ッダダダン!

ASALATO LESSON | Saliou | Chest Bass (Senegal,2019)

こちらはテクニック。胸にあてて、低音を全面に強調するChest Bass。Saliouが奏でるとリズムのキレが違いますね!

まとめ – 比較文化 –

アサラト先進国の日本では職人気質で丁寧なプレイが多いのに対して、アサラト発祥国の西アフリカでは訛りのあるリズム、自然に身体が揺れる怠惰さ。また時に儀式的で荒々しくもあるプレイが見受けられます。

同じアサラトでも各民族に渡ることで、地域性や文化が色濃く表れるのはとても興味深いです。シンプルなだけに遊び方も様々!本当に奥深い楽器だと実感します。

以上、【最も解り易い】アサラト講座 – 西アフリカ編 –でした。
みなさんのプレイの参考になれば嬉しいです。

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