Rav Drum – ロシアの楽器革命 <Part 1>

イントロダクション

2013年にロシアで誕生したRav Drumは欧米メディアで革命的だと評される楽器 (Revolutionary Instrument) です。一体Rav Drumは何が革命的だったのでしょうか?今回の丸いブログでは、Rav Drumについて<Part 1>と<Part 2>の2つに分けて深く掘り下げたいと思います。

この<Part1>ではRav Drumが誕生した時代背景、基本構造、ハンドパンとの比較、Rav Vast 1 and 2の比較など解説しています。

スケール構造、基本演奏方法、メンテナンス(お手入れ)などは <Part 2>をご覧下さい。

Rav Drum – ロシアの楽器革命 <Part 2>

 2013 – 時代背景 –

彗星の如く現れたかのようにみえるRav Drum。実は「Hang」から「Handpan」へと移行する流れの中で誕生していたのです。PanArtより「Hang」が誕生したのが2000年。価格高騰し幻の楽器と言われたのが2008年以降。

Rav Drumは「Hang」が入手困難と言われた2013年、ロシア西部の工業都市ペルミ(Perm)にて誕生。2年間プロトタイプ時期を経て、2015-16年前後に正式にリリース。Nadishana(ロシア)やKabeção(ポルトガル)、David Kuckhermann(ドイツ)などの欧州ハンドパン界のトッププレイヤーたちに積極的に親しまれ、2018年現在、Rav Drumが世界中に広まりつつあります。

Rav Drum誕生秘話を探るためにRav Vast社の社長であり、Rav Drumの開発者でもあるAndrey Remyannikov氏のインタビューをみてみましょう。(ロシア語)

Creation of RAV Drum(RUS,2016)

Andrey氏は

「2012年頃(インタビューの4年前)PanArt社の「Hang(ハング)」をに入手しようとしたが、入手困難だったため自分で製作することにした。」
「13個の工程を経てチューニングして美しいサウンドを追求。その結果このような幾何学的なデザインになった」
と、人気スケールG Pygmy(古代アフリカ)を奏でながらインタビューに応じています。

欧米DTMメディアAudioNewsRoomでRAV VAST社の最新インタビュー(2018年3月)が掲載されています。ソフトやハードを紹介するメディアに楽器そのものが特集されるのは異例!

Interview: RAV Vast – The Story, Handpans vs. Tongue Drums And What’s Next

こちらのインタビューでも

We didn’t want to make a copy though – the aim was to invent something new.
「当時Hangのコピーを作りたくなかった、何か新しいものを目指していた」

と答えています。なるほど、不屈の精神が新しいプロダクトを生み出したのですね!

RAV Drum prototype video #3(RUS,2013)

こちらは2013年6月に公開されたRAV DRUMのプロトタイプ。荒削りながらディープなサウンドは当時から健在!

旧ソ連時代の武器工場が美しいサウンドの原点!?

Rav Drumの音が鳴る原理はスリットドラムと同じです。

スリットドラム(Slit Drum):箱型木材にスリット(割れ目)を入れた体鳴楽器。通称木鼓(もっこ)。長いスリットは低音、短いスリットは高音と、サイズの違うスリットによって音程が変わり、シェルの中で音が反響し合い大きな音へと変わります。

幼児向け打楽器のスリットドラム

Rav Drumは木製でなく鋼鉄で製作されています。つまり、メタリックなスリットドラムと言えるでしょう。
Andrey氏が繰り返し行った13回に渡る鋼鉄加工により、美しいサウンドが生まれました。その加工技術の高さは工業都市ペルミ(Perm)ならでは!

工業都市ペルミ(Perm)とは?

ソビエト連邦時代、ペルミには武器や戦闘機を作る工場がたくさんありました。敵国から爆弾でも落とされないように、ペルミは地図にのることがなく外から閉ざされていました。そのため今も、武器の工場や専門学校、戦争博物館などが多くあります。最近は工業の分野も広がって、鉄やエンジンなどを作っている工場も増えてきました。(『ロシアで最も空気の重い町ペルミ』より抜粋)

Rav Drumの最大の特徴は「ディープな余韻と深遠なリバーブ効果」です。それは年間を通して曇りが多く、憂鬱でダークなペルミ(Perm)の天候を象徴しているのかもしれません。

さらに個人的な推測ですが、この美しいサウンドが実現できたのも旧ソ連時代に武器製造で継承された熟練の鉄加工技術がルーツにあったからなのではないのでしょうか?旧ソ連主導でガラバゴス化され、地図に載せられなかったペルミ(Perm)は今、世界中のハンドパン愛好家に注目されているのです。

Nadishana, ◦₪◦ “Particles”, RAV drum solo(RUS,2016)
Rav Drum – G Pygmy
( G2/C D Eb G Bb C D F)

 Handpan(ハンドパン)vs  Rav Drum(ラブドラム)

出典:Didge Projectより

Rav Drumはハンドパンとよく比較されます。5つの項目で比較したのでご参考下さい。

1)頑丈さ
繊細なハンドパンと比べるとRav Drumはとても頑丈。特殊加工された鉄は強度があるため、強く叩いてもチューニングが狂わないと公式で発表されています。気軽に外に持ち出すこともできますし、子供に触らせても壊されてしまうこと少ないと思います。Rav Drumは個体差のあるハンドパンに対して、工業製品として完成しています。

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2)音質、音圧
Rav Drumの音圧はハンドパンよりもやや小さめ。人通りの多い場所でのバスキング(路上演奏)には不向きかもしれません。しかしながら、Rav Drumはよりメロディックで瞑想的。ディープなサステインがハンドパンよりも長く続くため実験的な演奏も可能。特にDing(中央部分の低音)の響きは視界が揺らぐようなインパクトがあり、一聴の価値ありです。
※Rav Drumは「Rav Vast 1」と「Rav Vast 2」と2つモデルがあり、重量や音圧など違いがあります。詳しくは次項に!

3)錆び
Rav Drumはハンドパンよりも錆びが発生しやすい印象です。プレイ後は入念に手汗を拭き取って(夏場は特に!)、メンテナンスオイルでケアすることが大事です。また、錆び防止シートなどもケースと一緒に同梱して置いてもよいでしょう。酷い錆びでない限り音質には影響はありませんが、錆びが風合いを作る場合もあります。この辺はお好みで。
※メンテナンスについては<Part2>最終項目で解説してます。

4)重量、直径
平均的なハンドパンの重量が約4-5kgに対して、Rav Drumは「RAV Vast 1」でも4.9キロ、「RAV Vast 2」では5.9kgとややどっしりしています。また直径もRav Drumの方が51cmとやや小さめ。ハンドパンは55cm前後で製作されることが多いです。詳しくは次項に!

5)価格
何と言っても価格です。ハンドパンは安くても20万前後、高ければ30〜40万をも超えます。ハンドパンは職人がハンマーで叩いてチューニングするのに対して、Rav Drumは鉄にスリット(割れ目)を入れてチューニングします。工業化によって効率化されたRav Drumはハンドパンの半額、または1/3程度で購入することができます。

以上、ハンドパンの購入を考えている人は、Rav Drumも選択肢の一つに入れても良いと思います。次項ではRav Drumのスペックをみていきましょう!

Pasha Aeon, Kabeção, Vitalik Ivanov – Handpan & RAV Vast Jam(RUS,2017)
ハンドパンとRav Drumのセッション。音質や音量比較などのご参考までに!

 「Rav Vast 1」 vs 「Rav Vast 2」

前述したように、Rav Drumには2モデル存在します。2015年当初は「Rav Vast1」のみだったのですが、2016年にはより音量と重量がある「Rav Vast2」がリリースされています。

iPhoneのように最新モデルが最新技術があるというわけではなく、コンセプトが違うのです。スペック表を作成しましたのでご参考下さい。

出典:RAV VAST公式サイトより

 Rav Vast 1Rav Vast 2
素材鋼鉄(スティール)
直径約51cm
高さ約17cm
薄さ 1.5mm2.0mm
重量 4.9kg5.9kg
音質倍音が長く続き、響き渡ります。倍音はVAST1よりも短くなります。
音量VAST2に比べ15%静音。音に温もりがあります。音量が大きい。ハンドパンと同等の音量。
ハーモニクス / オクターブとても良く反応する。やや反応する。
プレイスタイル室内プレイ。瞑想的。メロディアス。屋外プレイ。パーカッシブ的。

サイズや高さは同じですが、スティールの薄さ(1.5mmと2.0mm)が違うため、重量の違いが生まれ、音量と倍音の長さ(サステイン)も変わってきます。ハーモニクス(3度、5度、8度 [オクターブ] )の鳴らしやすさなども変わってきます。

Vast2の方が重量が1kg重いため、長時間の持ち運びには注意が必要です。しかしながら、Vast2の方が音量がやや大きいため、パーカッシヴな演奏でバスキング等される方にはこちらをオススメします。屋外プレイに向き。

逆にVast1は軽量で倍音がより長く、音質がよりリッチで温もりがあります。3度5度のハーモニクスもVast1の方がよく反応するため、メロディアスな室内プレイに最適です。ヨガスタジオなどで瞑想的な演奏をされる方もこちらをオススメします。

「Vast 1」も「Vast 2」もそれぞれ良い所があるため、プレイヤー自身の環境に合ったモデルを選択しましょう!(個人的にはハーモニクスの反応が良いVast1が好みです。)

18スケールから9スケールへ削減!

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Rav Drumの多様なスケールについて紹介します。Rav Vast担当者から2018年6月より18スケールから9スケールへ削減されるとの通達を受けました。今後は下記の9スケールのみに絞られるようです。下記以外で欲しいスケールがあるなら、在庫の早期入手をオススメします。

特に、Kabeção氏愛用のMinor Pentatonic(G)や、唯一無二なONOLEO(B)が削減されるのは寂しいですね。既に入手された方でも下記以外のスケールは今後入手困難になる可能性が高いので、大事にキープしておいた方が良いでしょう。

– 2018年6月以降のラインナップはこれだ! –

【Vast1】1.5mm – 4.9kg
RAV Vast Pygmy  <Sound Test>
(G2) C3, D3, D#3, G3, A#3, C4, D4, F4
古代アフリカ民族をイメージしたサウンド。ダンサブル!

RAV Vast E Low Pygmy <Sound Test>
(E2)  A2, B2, C3, E3, G3, A3, B3, D4
超低音深淵サウンド。倍音重視のPygmyスケール。

RAV Vast Integral <Sound Test>
(A2) C3 E3 F3 G3 A3 B3 C4 E4
Dマイナー系と相性抜群。もちろんソロでも活躍できます。

 

【Vast1】2.0mm – 5.9kg
RAV Vast B Celtic Double Ding <Sound Test>
(B2) (A2) F#3 A3 B3 C#4 D4 E4 F#4 A4
B MinorとD Majorの中庸。D Majorの完全五度「A」が入ることで長調もカバー。

RAV Vast B Celtic minor <Sound Test>
(B2) F#3 A3 B3 C#4 D4 E4 F#4 A4
B MinorとD Majorの中庸。D Majorの完全五度「A」が入ること長調もカバー。

RAV Vast D major <Sound Test>
(D3) G3 A3 B3 C#4 D4 E4 F#4 A4
初心者向け長調。音楽の神童モーツァルトが最も愛したラブリースケール。

RAV Vast D Celtic minor <Sound Test>
(D3) A3 C4 D4 E4 F4 G4 A4 C5
D MinorとF Majorの中庸。D-minorの「A#」を抜くことで高揚感あるF majorも演奏しやすい。

RAV Vast B Kurd <Sound Test>
(B2) F#3 G3 A3 B3 C#4 D4 E4 F#4 A4
ややB Minorより。寂しさ、侘しさ、刹那さが表現できるB Kurd。

RAV Vast B RUS <Sound Test>
(B2) D3 F#3 A3 C#4 D4 E4 F#4 A4
ややD Majorよりながら中低音に音が集まりジャジーな雰囲気が醸し出せるB RUS。

如何でしたでしょうか?<Part 1>はここまです。次の記事<Part 2>ではスケール構造、基本演奏方法、メンテナンス(お手入れ)などを紹介しています。ぜひ続けてご覧下さい。

Rav Drum – ロシアの楽器革命 <Part 2>