ハンドパンのレコーディング機器紹介

Photo By Jun on First Touch #1

イントロダクション

外出自粛されている方、この機会にぜひハンドパンの宅録にチャレンジしてみましょう!

アトリエマルでは2014年頃からハンドパンのレコーディングを開始し、今では多くのハンドパン奏者さんが立ち寄ってくださる度に録音させて頂いております。嬉しい限りです。


Studio ○ [スタジオマル]
https://latelier-maru.com/studio_maru/

今でこそ、これが「自分のスタイル」というのが見つかりつつありますが、ハンドパンの集音はとても骨が折れました。そして、まだまだその沼から抜け出せず、より良いレコーディング方法を模索する日々です。

今回の丸いブログでは、ハンドパンのレコーディングにおいて録音機器をどのように辿ってきたかという個人的な死闘の記録をメモしつつ、皆さまの参考になればと思い記事にしました。一方的な内容で恐縮ですが、最後までお付き合いくださると幸いです。

*プロ用マイクなど周辺機器はサウンドハウスのリンクを紹介しています↓
サウンドハウス

*ハンドパンの録音方法においても、Master The Handpanの記事が参考になりました↓What is the best equipment for recording handpan?

iQ6 or iQ7でアイディアスケッチ

ハンディーでさくっと録音するなら、LightningコネクタでiPhoneに接続できるタイプがオススメ。

録音だけならiQ6↓

動画撮影+録音も兼ねたいならiQ7↓


録音フォーマットは 44.1kHz/16bit と 48kHz/16bit の2種類。

[購入後の使用感メモ]
iQ7の方が動画向きなのですが、マイクとコネクタとの接触がやや弱く新品購入時からややぐらぐらでした。当時はバッグにそのまま入れておくのはやや危険。耐久性はiQ6の方がしっかりしていました。(2015年頃)

風除けのためにウィンドスクリーンもあった方が良いのですが、かさばるのでマイク自体のコンパクトさが失われます。

iQ6、iQ7どちらにしてもこの小ささは魅力的。ハンドパンを持って出かけた時に、ふとインスピレーションが沸きその場ですぐ録音したいときには十分なマイクだと思います。

iPhoneだけでステレオレコーディング!

iPhone XS/XS Max/XR/11/11pro では動画撮影モードでのみステレオ録音に対応しているようです。


「設定」→「カメラ」→「ステレオ音声録音」アクティブにする。

この際、iPhone11 / 11proに買い換えるのも大いにアリだと思います!
外部マイク要らず、iPhone 11の内蔵マイクでステレオ音声の動画撮影(iPod Loveの記事より)

iPhone11 pro

H4n Proで本格的なレコーディング

2016年頃、PCMレコーダーを購入したことで本格的なレコーディングが可能になりました。レコーダーでの録音を経験してしまうと、もうiPhoneやiQ6,7には戻れません。

1台目にオススメなのがZoomのH4n Pro!音の情報量が多くねっとりした密度の濃い音が録音できました。

最近販売されたBlackモデルがカッコ良い!(スペック、仕様は同じ)


録音フォーマットは最大96kHz/24bit(CD音質の3.3倍)

[購入後の使用感メモ]
H4n Proの他に下位モデルH1n、H2n、H3、などがありますが、個人的にはハンドパンの豊かな倍音などをしっかりと録音するにはH4n Proが良いでしょう。

その理由として、音質もさることながら2本の外部マイク入力が可能だからです(下位モデルには外部マイク入力がありません)。次項で詳しく述べますが、外部入力にコンデンサマイクを接続することでより立体的なサラウンド録音へと進むことが出来ます。

注意:中古市場では前機種「H4n」の出品がありますが、「H4n Pro」の方を強くオススメします。Proの方はマイクプリアンプの性能が大きく上がっているため、外部マイク接続時に違いがはっきり現れると思います。

How to Strike Rav Drum [Octave, Harmonics and Mallet] (Japan,2018)

このRav Drum動画はH4n Proのみで録音しました。

スタンドはManfrottoのミニ三脚↑を使用しました。Ravのノートに向かって角度を付けるようにマイキングしています。

下の音源はH4n Proの録音レベル(Input Level)は80ぐらい。(かなり感度高い状態)
Rav Drumから50cmほど離してタッチしています。しかし、低域が強調され過ぎていて、ややモヤっとしていますね。これを近接効果 (Proximity effect) と呼びます。

近接効果

麒麟です。 (Japan,2019)

近接効果とは、「音源がマイクに近づけば近づくほど、低音域が強調される」ことです。

麒麟の川島さんのマイクに近づけて「麒麟です」と言うつかみですが、これがまさに近接効果。(「低音ええ声の川島さん」がより低域を強調させるというボケ)

先ほどのRavの場合、H4n Pro側で低音カットをアクティブにしておけばよりクリアに録音ができていたはずです。しかし、それと引き換えに「低音の厚み」のようなものも一緒にカットされていたかと思います。

このようにレコーディングに答えはなく、マイクの特性を理解してどのような音を録りたいのかをイメージすることが大事です。

参照:マイクロフォンの近接効果とは?(PAインフォメーションより)

マイキングについて

さて、近接効果を理解したところで、具体的にマイクの位置や設定を考えていきましょう。

How to Record Handpan + Audio Syncronizing – Tuturial (German,2016)

Mandakini氏によるチュートリアル。

動画ソフトを使った解説で、音と映像の同期方法だけでなくマイクの位置・空間の使い方など含めてとても参考になる動画です。ぜひご参考下さい!
同氏は対面からDingに向けて30cmほど離して、録音レベル(Input Level)を55で設定しているそうです。8分20秒からデモ演奏が始まります!

マイク1本でハンドパンの集音する場合、マイクの位置はプレイヤーさんの対面、耳やあごと同じ高さからDingに向けるのが定番なセッティング方法だと思います。

「楽器⇄マイクの距離」と「録音レベル」は比例関係ですが、音割れ(Clip)を恐れて録音レベルを下げてしまうとサウンドの迫力が欠けてしまいます。音割れしないギリギリまで録音レベルを上げて録音に臨みましょう。

機材のセッティング、マイクの位置、楽器の音の鳴りがバチっとハマる空間のスウィートスポットを見つけ出し、Let’s レコーディング!

映像と音を同期させる

動画編集ソフトで映像と音声を同期

レコーダーで録音した音素材と、カメラで録画した映像素材を同期させる必要があります。Mandakini氏のように演奏前に「手を叩くこと」で編集ポイント残しておきます。

カチンコ (Clapperboard)

動画編集用ソフトはMac付属のiMovieでも問題なく同期できます。しかし、0.01秒単位などより細部で同期させるにはAdobe PremierやFinal Cut Proなどプロ用動画編集ソフトがオススメです。(映像と音楽の微妙なズレは思っている以上に気になったりします。)

同期後はカメラで録画した方の音声をボリュームゼロにします。これで別撮りした音声と映像がリンクできるようなりましたね!

次項から複数のマイクを使って録音する方法をご説明したいと思います。

定番ベリンガーC2でASMR!

その前に、甘いモノでも見てティーブレイク。ASMRの料理動画をどうぞ!

ASMRとは:聴覚や視覚への刺激によって感じる、心地良い、脳がゾワゾワするといった感覚(自律感覚絶頂反応)

苺たっぷり フレジエの作り方 | えもじょわキュイジーヌ (France,2019)

個人的にASMRの料理動画を見るのがとても好きです。
(上記動画のEmojoaさんはRodeのNT4を使用されているそうです。)
サウンドハウスで見る
ビデオカメラ用ステレオマイク。
Rode NT4 / 48000円ほど。
<サウンドハウスで見る>

ハンドパンでは2本のコンデンサマイク(ペア)を左右から狙うのが一般的です。マイキングに成功するとその場にいるような臨場感が生まれます!

上述したようにH4n Proには高品質なマイクプリアンプが搭載されています。(EIN -120dBu以下)ファンタム電源をOnにしてみましょう!ヘッドホンをすると普段聞こえなかった音の粒が耳に広がります。

定番のベリンガーC2はH4n Proと相性がよかったです!サウンドハウスで見る2本で6500円ほど。安価で使えるベリンガーC2
<サウンドハウスで見る>

マイクスタンドもClassic Proのブームマイクスタンドで充分。
サウンドハウスで見る
Classic Proのブームマイクスタンド1本/1900円ほど。
<サウンドハウスで見る>

初めてファーストタッチのイベントを行ったのも「H4n ProとC2」の組み合わせでレコーディングしました。

[The First Touch] Sheldon C# Equinox (Sonobe)

SheldonのFirst Touch
C# Equinox9 [Sonobe]は中国国内で多くシェアされました!

現在のメインマイク – Rode NT5 導入

ベリンガーC2はとても良いマイクだったのですが、高音の解像度の荒さが少し気になりました。高音をよりドラマティックに録音するマイクを探していたところRode NT5(ペア)に辿り着きました。

きっかけは2020年のTokyo Handpan Festivalにも参加予定するはずだったDan Mulqueen。彼の傑作アルバムHandwriteing (2018) が好きでよく聞いていました。どうしたらこのようなレコーディングができるのか考えていたところ、、、(このアルバムの後半は全てハンドパンのみの演奏です、ぜひご視聴を!)

その時にDan氏がインタビューでレコーディングセットについて言及している記事を発見!!

I used an RE-20 to capture the punchiness of the pan, (Electoro Voice – RE-20
two Rode NT5’s overhead, (Rode – NT5
1 Neumann U87 for a few things above the pan, (Neumann – U87)
Shure SM7B to capture some of the more defined slap sounds as well as some room sound(Shure – SM7B
(記事 Discover Dan Mulqueenより抜粋)

高級マイクがずらりなのですが、一番良い働きをしているRode NT5はその中でも一番安価な上、入手しやすいところが決め手でした。

サウンドハウスで見る
Rode NT5(2本で33000円ほど)
<サウンドハウスで見る>

またDan氏のインタビューから、「マイク一つ一つに役割を持たせている」ことが分かり、目から鱗でした!

その後アトリエマルではH4n Proではなく、4本のコンデンサマイクが挿せるZoom H6を新調。ミックスダウンを勉強しながら The First Touch #1のイベントを正式に開催することになります。


録音フォーマットは最大96kHz/24bit(CD音質の3.3倍)
Zoom H6。最新のBLK(ブラック)モデルの方がお値打ち。

[購入後の使用感メモ]
Zoom H6、マイクプリアンプの性能はH4n Proと同じなのですが、付属マイク(XYH-6)の集音能力が高いうえ、外部マイク4本を同時に録音することができます。

カラー液晶が見やすく、録音レベルの調整がダイヤル式で瞬時にできるのは忙しい現場で重宝します!

【コラム】マイク談議

持ってはいないけど、試してみたいマイクを紹介致します。

先ほど紹介したMade in オーストラリアのRode NT5は、Made in ドイツのNeumannのKM 184をモデリングして製作されたと言われています。KM184は16万近くするハイエンドマイク。機会があれば撮り比べしたいところ。

サウンドハウスで見る

Neumann KM184 (2本で16万ほど)
<サウンドハウスで見る>

A fast Handpan groove – "No time" – on NUMEN D Kurd 8 – Relaxing music – Handpan Mystic Flow

NUMEN D Kurd 8 – Relaxing music – Handpan Mystic Flow(German,2019)
Neumann KM184で集音されたD Kurd

Nadishana氏がRavに使用しているAKG C1000

RAV VAST2 Drum Double Ding 10 B Celtic played by Nadishana

RAV VAST2 B Celtic Double Ding (Russia,2017)

Nadishana氏によるRav Drum試奏動画ではAKG C1000を2本使って集音しています。B Celtic Minor Double Dingだけでなく、B Pygmyもこのマイクを使用!

現在は赤ラインは販売中止され、より改良されたAKG C1000Sが販売されています。安価なので入手しやすいですね。

サウンドハウスで見る
AKG C1000S (1本10000円ほど)
<サウンドハウスで見る>

なめらかに伸びる周波数特性は、繊細で豊かな響きを透明度の高い音質で再現。(メーカー説明より)

Rav Drumの集音にはぴったりなマイクかもしれません!

B PygmyでもAKGのC1000を使用!

欧州ではOktava MK012が人気。

そして欧州で定番化しているのはMade in ロシアのOktava MK-012。欧米プレイヤーの動画で本当によく見かけます。

並行輸入品はこちらから↓

NEW SPRING MUSIC on HANDPAN OMANA

OMANA – C Aegean 9
Oktava MK-012 (2本) をH4n Proへ接続。H4n Pro内蔵マイクでボトムから狙って集音とのこと。

Oktava MK012のマイクが欧州ハンドパンシーンで一般化したのはおそらく2016年(撮影は2013年)に David Kuckhermann氏が発表したこのビデオ。

Handpan Video Podcast Episode 3 – Microphone Comparison

Microphone Comparison(German,2016)

以下15本のマイクを使用して「最高の録音セット」を探し出すと言う企画。

Kuckhermann氏に「パーフェクトコンビネーション」だと選ばれたのが、こちらのセット↓

Oktava MK012+ Recording Tool MC700

2016年当時、どちらも日本で購入が出来ずに気が遠くなった記憶があります。。。それはまさにハンドパンの購入自体が大変困難だった時代でもあります。

注意:ペアマイクを購入するときは1本ずつ購入するのではなく、メーカーが組み合わせたペア(通称 Matched Pair )モデルを購入しましょう。

マイクもハンドパン同様に微妙な個体差があるため、単体で2本揃えた場合(または中古で1本ずつ購入)、性能に差異が生まれ後にミックスダウンが困難になります!

現在のセッティング


海 @ Studio ○ [スタジオマル]

2019年からは、

左右の耳の位置にNT5 (Rode) を設置することで、ハンドパンのボワンとした浮き出る倍音の集音

中心にAT4050 (Audio Technica) を設置することで、低域と音の定位感を集音

数メーター離したところにH6 (Zoom) の付属マイク(XYH-6)を設置することで、アンビエントな空気感、環境音を集音

ケーブルはBeldenを使用。
サウンドハウスで見る

Beldenケーブル (3m / 2300円ほど)
<サウンドハウスで見る>

[Handpan Improvisation] YASSAN – D Sabye 14 [Meridian]

YASSAN – D Sabye 14 [Meridian] (Japan,2020)

アトリエマルにとって、雨の日は最高に良いレコーディング環境。戸を開けて積極的に外音も集音させます。

車が通り水溜りを弾くタイヤの音は波音のよう。鳥が冴ずる音も気持ち良いです。いましか撮れないインプロビゼーションに価値を感じています

DAWソフトでミックスダウン

録音した複数音素材を一つの音楽ファイル(「2ミックス」とも呼ばれます)にするにはミックスダウンと呼ばれる作業が必要です。
DAWソフトで音像定位のために音量やPanの調節や、音を整える目的でのEQ調整で自然に馴染ませていきます。

Logic ProのChannel EQ編集画面

その処理を施さなければ、音素材同士がぶつかり合ってもっさりした音になってしまいます。一つ一つの音素材を聞き分けて不要な箇所をカットしていく工程が大事なのです。

オーディオインターフェイスやモニタースピーカーまで購入するとコストがかさむ上、PCへの負担も大きいです。その場合、モニターヘッドホンを1つ購入しましょう!どちらも業界定番のSonyの赤(MDR-CD900ST)と青(MDR-7506)。


機材が揃ったところで、実際にサウンドエンジニアがどのように音を整えていくのかみていきましょう。

注意:プロのサウンドエンジニアの方はヘッドホンのみのミックスダウンを推奨しておらず、モニタースピーカーを通して「音風」を感じながらミックスダウンをしていきます。

Part 1: Levels and Panning | HOW TO MIX DRUMS

Levels and Panning | HOW TO MIX DRUMS (US,2016)

上の動画はドラムのミックスダウンなのですがハンドパンにおいてもとても参考になりました。
まずは素材から音像定位のためのPan振り、音量調節をしていきます。

Part 2: EQ and Compression | HOW TO MIX DRUMS

EQ and Compression | HOW TO MIX DRUMS (US,2016)

音像定位が決まれば、次にEQやコンプを使って音を整えて馴染ませ、まとまりのある音にしていきます。
ハンドパンの場合、ナチュラルな音が好まれますので、この処理を終えた時点でファイルへ書き出しても良いかと思います。

しかし、個性的な音源作品を作るために「お化粧」をしたい場合はReverb(リバーブ)も少し勉強しておきましょう↓ ガラッと印象が変わります。

Part 3: Reverb | HOW TO MIX DRUMS

Reverb | HOW TO MIX DRUMS(US,2016)

まとめ

如何でしたでしょうか?個人的なマイクや集音の歴史と合わせ、動画の紹介などさせて頂きました。

これまで経験して思うことなのですが、機材のスペックや仕様だけをみていても、実際に購入して接続してみないと各機材の相性が分かりません。今回のメモが少しでも皆さまのレコーディングの参考になれば幸いです。

他にも単体でFocusriteのマイクプリアンプを購入したり、PCにオーディオインターフェイスを挿して録音なども経験しましたが、そうなると電源タップにもこだわっていく必要があります。こだわればキリがないのが正直なところ。

試行錯誤を繰り返した上、アトリエマルでは「外に持ち運びが効く最低限のセットを」というテーマにした今の録音機材が気に入っています。

Chenin & Sheldon – 2Kurd 光盤 [Koban]

Chenin & Sheldon – 2Kurd 光盤 [Koban] (China,2020)

2020年初めに中国出張で録音した動画です。自粛要請が出ている今は海外出張など夢のようにさえ思いますが、いつかは日本中、世界中を飛び回って出張レコーディングなどもしたいなぁとも夢見ています。その時は皆さまとの出会いを期待して!

追記:2020年3月より、Zoom F6を購入。H6と併用しながら勉強中!

サウンドハウスで見る
フィールドレコーダー Zoom F6
音割れを防ぐ32bitフロート録音対応。マイクプリアンプが優秀。
<サウンドハウスで見る>

Happy Handpan Life !!

ブログよりも早く、色々な情報をリアルタイムで発信しています。